生まれて初めて作ったケーキ
初めてホットケーキを作ったのは、小学校の2年生か3年生の頃でした。
どうしてホットケーキを作りたくなったのか きっかけは覚えていません。
母が夕飯の支度をしている時に そばで見ているのが好きで、たまに簡単な作業の手伝いを言い渡されるとうれしくてはりきって作業に打ち込んでいたので、その頃から料理に興味を持っていたのだと思います。
それにしても、単独でキッチンを、 火を使う作業を、よく母が許してくれたなあと いまになっては思います。
『ケーキ屋さん』への夢が広がっていった少女時代
計量カップで計った牛乳をボールに入れ、 卵を割り入れ泡だて器で混ぜたところへ ホットケーキミックスを振り入れて混ぜ合わせる。
そんな作業がうれしくて楽しくて、フライパンをコンロに乗せて火を点ける緊張感には心が躍りました。
『フライパンを熱したら、一度火から下ろして濡れ布巾の上に乗せてから生地を流し入れる』
パッケージに書いてあった通りにやってみるときれいな焼き色になり、母が横で『へえ~、ホントだ、きれいに焼けるモノね』と感心するので、得意になって作業を続けました。
焼きあがったホットケーキを3枚重ね、マーガリンと(当時、お高いバターは買ってもらえなかった…)このために買ってもらえたはちみつをかけると、そこには自分自身で作り上げた『夢』ができあがっていて、うれしさの頂点に達していました。
ちいさな少女が初めて作ったケーキとなれば、周りのオトナたちはみんな褒めてくれます。
さらにそれがうれしくて、母にお願いして、キッチンの使用許可を何度も申請してはホットケーキを作らせてもらいました。
やがて、新し物好きの母がオーブンを購入して『パウンドケーキ』なるものを作るようになると、ホットケーキよりもグレードの高いそのケーキに、少女の夢はさらに広がりました。
オーブン使用許可をもらえて、さらに大きくなった夢
『オーブンは中学生になってからね』
お年玉で買ったお菓子の本を眺めては、クッキーやケーキのレシピを見ながら、オーブンで焼き上げるその魅力的なお菓子たちに少女の夢はどんどん膨らんでいきました。
中学生になると約束どおりオーブンの使用許可がおりたので、母の買い物について行ってはケーキの材料を買ってもらい、ケーキやクッキーを作っては親戚の家に届けたり友達にプレゼントしたりしていました。
その頃読んでいた少女漫画雑誌のなかに、自宅カフェを中心に物語が展開されていく漫画があって、それはもう、理想のままの物語でした。
その頃将来の夢を聞かれると、決まって『手作りケーキのコーヒーショップ』と答えていました。
18歳で失った夢が、二十歳で復活
やがて進路指導を受けながら、ケーキだけでなく料理を、とか
料理を作るだけではなく指導を、とか
調理士よりも栄養士の方が仕事の幅が広がる、とか
考え方が広がっていき、高校卒業後は料理関係の専門学校に通う希望でした。
でも、多感な思春期。
短期間にいろいろなことがあり、進学には至りませんでした。
幼いころから抱えていた夢を失った私は、ほかにやりたいことが見つからないままに適当な仕事に就き、毎日繰り返される作業に疲れていました(いま思えば18歳という若さで!)
それが二十歳の頃に調理師免許を取得するチャンスに恵まれ、かなえることのできなかった夢への可能性を持つことができたのです。
10歳の頃の夢を、40代後半で現実に
それから四半世紀を過ぎたところで、少女の頃の夢『ケーキ屋さん』を、小さな規模ではあるけれどかなえることができました。
幼いころからずっと胸に抱えていたことが18歳にして絶たれ、道を変えて常に目の前に現れる新たな目標に向かって走り続け、巡り巡って戻ってきたきた少女の頃の夢。
長い時間をかけてやってきた、私のたいせつなものです。
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