小笠原の地酒・ラムの新ブランド『海底熟成ラム Mother』が発売されて約2年。
気になってはいたものの、1本4300円の価値があるのかどうかわからずに手を出せないでいたのですが、試飲させていただくチャンスをいただきました。
飲んでみてビックリ!
ラム好きの私が感激するほど美味しかったので、今回はこの『海底熟成ラム Mother』をご紹介させていただきます♪**
小笠原の地酒はラム
全国各地に『地酒』と言われるお酒はいろいろありますが、そのほとんどが日本酒か焼酎ですね。沖縄の『泡盛』も、焼酎に似た作り方です。
沖縄と同じく南方に位置する小笠原の地酒は、なんとラム酒なのです。国内において地酒がラムっていうのは希少ですよね!
1992年(平成4年)に販売を開始した小笠原ラムの新ブランド『海底熟成ラム Mother』が2017年(平成29年)に発売されました。
小笠原ラムの歴史
ラムは、砂糖の原料・サトウキビの副産物
小笠原諸島は1830年頃から人が住むようになり、欧米人の捕鯨基地として利用されていました。
この頃から欧米人によってラム酒が作られていたようで、島に住んでいた欧米人と捕鯨船との間でラム酒の取引があったことの記述も残されています。
ラム酒の原料は、サトウキビから砂糖を作るときの搾りかす『廃糖蜜』と呼ばれるものです。この『廃糖蜜』を発酵・蒸留させて作られたお酒がラムになります。
いわば、砂糖の副産物ということですね。
1876年(明治9年)に小笠原諸島が日本領土となってからはサトウキビの栽培が盛んになり、その副産物として作られるラムは『糖酎』『泡酒』『蜜酒』と呼ばれて、島民の間で愛飲されていました。
ところが第2次世界大戦末期、戦況悪化により全島民が強制疎開させられることになり、終戦後はアメリカの統治下となったことで『糖酎』文化は途絶えてしまいました。
小笠原返還後にラムを復活
小笠原諸島がアメリカから日本へ返還されたのは1968年(昭和43年)です。
戦後23年間にも及んだ空白を埋めるためには、長い年月がかかりました。
その中で、帰島した島民から『もう一度糖酎を飲みたい』という声があがり、1980年代の『ふるさと創生事業』に村が出資。
1989年(平成元年)に『小笠原ラム・リキュール株式会社』が設立されて、1992年(平成4年)からラムの販売が始まりました。
海底熟成ラムができるまで
では、小笠原の地酒であるラムを、なぜ海底熟させようということになったのでしょう。
海底熟成ワインに海のロマンを語ったシェフの話
2014年春、母島の小さなレストランを任されていたシェフが新しいワインを探していた時に、『海底熟成ワイン SUBRINA』と出会います。
『沈船(海賊船)から引き揚げられた酒は格別に美味い』と言われる所以を確かめたいから、自分たちでワインを海底に沈めてみようという考えから始まったプロジェクト。
南アフリカに葡萄畑とワイナリーを作り、出来上がったワインを南伊豆の海底に沈めて数ヶ月後に引き上げ、テイスティングと成分分析を行い、同じ期間陸上で保管されていたワインよりも美味しくなっていたことが認められたというワイン。
当初の販売価格は1本一万円を超えるモノでしたが、店ではなく自分用にと即買いしたのでした。
そして、手元に届いたワイン。
数ヶ月間海底に沈められたワインの瓶には、サンゴや塩の結晶がこびりつき、短いながらも海中で眠っていたことを語りかけます。
店のシェフである彼女がそのいきさつをカウンターで話すのを聞いていたオーナーは最初、その考え方を馬鹿にしました。
が、元ダイビングインストラクターであり、オーストラリアにて長期のクルーズ経験を持つ彼女は反論します。
カウンターで飲んでいたダイバーはその意見に大絶賛。
盛り上がる会話を聞きながら、観光協会理事でもあるオーナーの目の奥がキラリと光っていました。
小笠原ラムにも、海のロマンを加えてみようという試み
その後、観光協会を中心に『小笠原ラムを母島の海で熟成させる』というプロジェクトが立ち上げられ、母島のダイビングサービス・クラブノア母島の協力を得ながら、ラムの海底熟成試験計画が始まりました。
大きな疑問としては、『貯蔵発酵することのない蒸留酒を寝かせたところで味が変化するのか?』ということ。
ブランデーなどの蒸留酒は、木製の樽で寝かせることで木の色や香りがついて味が熟成されますが、ガラスの瓶で寝かせた場合、一般的には味の変化は起こりません。
この疑問に対して助言をしてくれたのがラム専門店「スクリュードライバー」の店長、土屋貴司さんでした。
小笠原ラムを海底に沈める作業
小笠原ラム・リキュール株式会社では、海底での水圧に耐えうる瓶と水圧により陥没しないキャップの商品開発に取り組みました。
また、台風などの時化でラムがバラバラにならないように、母島の建設業者には鉄骨ラックを作ってもらいました。
そして2015年(平成27年)春、クラブノア母島(現・ダイブステーション母島)のスタッフにより、専用ボトルに入った小笠原ラムが、母島近海10~15mの海底へと沈められたのです。
海底に沈めた小笠原ラムの1年後
ラムを沈めた当初は、『台風で瓶がわれてしまうのではないか?』『海底に沈めたところで味の変化はあるのだろうか?』とたくさんの心配を抱えていましたが、瓶の破損もなく、無事に海底から引き揚げられました。
その後に行われた試飲会では『味や香りがまろやかになった』との評価を受けてこのプロジェクトは成功となり、販売が開始されたのです。
海底熟成ラム Mother の販売
海底熟成ラム Mother は年間1800本作られていて、以下のショップで購入することができます。
母島
父島
小笠原以外
インターネット販売
Mermaid Cafe のメニューにも加わりました!
フルーティでさわやかな香りは、通常の『小笠原ラム』とは別格です!
ラム好きな私が保証する美味しさ!
…だけど300mlで4300円はちょっと考える…という方は、Mermaid Cafe にてショットでお試しくださいませ。
その味に納得がいったら、ボトルで購入していただければいいと思います♪**
次に小笠原を訪れるまでの間ご自宅にて、この海の恵み・ゆらぎ・ロマンに想いをはせながら口にする海底熟成ラムに、心から酔いしれることができるはずですよ♡
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