小笠原・父島周辺のダイビングサイトの中に
『マンゾウ穴』という人気のポイントがありました。
ドブ磯、タコ岩、クラゾウ根、万作、etc…
古くからあるポイントは、本当に渋い名前がついていることが多いです(^^;)
その昔、漁師さんが呼んでいた漁場が
そのままダイビングポイント名になっているからです。
『マンゾウ穴』は、『万蔵』という渋い名前のイメージとは真逆の
白い砂地の広がる癒されポイントです。
ドロップオフ&深い藍色の中で大型回遊魚を狙う有名ポイントが多い中で
数少ない、水深も浅く真っ白な砂地が広がるポイント。
サンゴ礁が隆起してできた島や岩が多く点在する父島南西部にあるので
サンゴダストと呼ばれる白い砂が広がっているのです。
白い砂地にマリンブルーの海。
穏やかで平和なイメージですが
外洋に面しているのでそれなりに潮流があり、
風向きや潮汐を計算しないと潜ることのできない、難しいポイントでもあります。
その理由は、ポイント入口付近から見るハート型の穴にありました。
小さな岩の奥に穴が開いているので、
そこだけ水の流れが早くなるのです。
せまく暗い水路をくぐるとその先にハート型の穴が見えて
ホワイトチップシャーク(ネムリブカ)や
回遊魚の美しいシルエットを楽しむことができます。
水流に逆らいながら砂地に留まるのは簡単ではないのですが
カメラを持つダイバー全員がそのショットをを取り終えるまでは
がんばってこらえて留まり
全員のOKサインをもらってから
一斉にハートの穴をくぐります。
潮流にやや緊張しながらエントリーし
一瞬ではあるけれど真っ暗な水路通過時にやや不安になり
流れに逆らい、こらえながらメインの景色を見る、という
緊張続きの前半なので
その後に広がる白い砂地に癒される解放感が
余計に増すのかもしれません^^
このステキなダイビングポイントに昨年の秋、衝撃が起こりました。
なんと
エントリーポイントの岩が崩れて、
ハートの穴へ向かう水路がふさがれてしまったのです!
爆弾低気圧と呼ばれる、北海道沖で発生する大きな低気圧から
長く伸びる前線。
その影響により時化が続き、
石灰岩で形成されているサンゴ礁域の隆起岩が
何か所かでダメージを受けた結果でした。
長い間小笠原に通うダイバーにとって、
また、大好きなこの海をガイドするダイビングスタッフにとっても、
ショックの大きい事件。
各ショップから配信されたその情報に、
多くのダイバーが悲しみのコメントを残していました。
永遠に存在してほしいと願う景色は数多くありますが
自然の流れの中では、それは難しいことなのだと実感。
それと同時に、
いま目の前にある景色を大切に
より愛情を持って接しようと思った出来事でした。
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